テレビだョ!全員集合―自作自演の1970年代

1967年生まれの私にとって1970年代は、物心付いた時から小学生までの人格形成期を過ごし、一番テレビを見ていた時期でありました。
今回紹介する本は、その1970年代のテレビについて研究した「テレビだョ!全員集合―自作自演の1970年代」です。

テレビだョ!全員集合―自作自演の1970年代

テレビだョ!全員集合―自作自演の1970年代

タイトルから分かるように、また表紙のテレビ画面に映った人物がドリフターズに見えることからも、1970年代のテレビの象徴が「8時だョ!全員集合」だったことが伺えます。
全体を通しての感想は大学のメディア論の教科書みたいな内容だった事(実際殆どの執筆者が大学で教鞭を取っている方々でした)と、1970年代をキーワードにしてはいるが、やっぱり1980年代が日本のテレビの転換期だったと改めて感じたという事です。
タイトルにある「自作自演」ですが、いわゆる「ヤラセ」とはニュアンスが違っていて、どちらかというと演出としての意味合いで使っています。
まあ、その辺の線引きは難しいのですが、「自作自演」を面白がる80年代の手法とは違った視点で70年代を取り上げているようです。
ただ、「あるある?」の捏造事件直後に出版された本なので、ヤラセについてもかなり意識した部分もありました。
ドリフターズについては第一章の「『低俗』であるということ─『全員集合』と通過儀礼」で取り上げています。
ここでは「全員集合」という番組はお茶の間(観客)と舞台の「内輪受けの共同体」と定義していますが、「志村、後ろ、後ろ」のような一体感はあっても、所詮はコントという「芝居」を見ている距離感はありました。
だから長さんがメンバーを怒鳴ったりメガフォンで殴ったり、逆に長さんがメンバーにやり込められる場面を見ても悲惨なものは感じませんでした。
そういや親も食べ物を粗末にしたり、ウンコやチンチンのシモネタは批判してましたが、暴力的だとかシゴキ(イジメ)だとかは言ってませんでした。
リアルとフィクションの垣根が曖昧になったのはやはり「ひょうきん族」以降だと思います。
先に書きましたように、80年代が日本のテレビの転換期だったと思うのですが、フジテレビの「軽チャー路線」というのが民放各局(後にはNHKにも)に大きな影響を与えました。
その中に「女子アナブーム」というのがあったのですが、露木茂による当時のフジテレビ内部事情が載っていまして、彼女たちが男性社員と比べて差別的な扱いを受けていたかが分かります。
当時は全体的に女子社員の扱いが差別的であり、フジテレビのお家事情で労組の問題もあったりとするのですが、それについて書いたら更に長くなるので省きます。
値段は2400円+税で安くは無い本ですが、1970年代のテレビに思い入れがある人は読んで損はないと思います。