怒る長さん、怒られる長さん

怒る長さん、怒られる長さん



私が「渡辺プロダクション」と聞いて浮かぶのは、「有名な歌手が多くいる、大きなプロダクション」程度でした。
渡辺プロについては、特に興味関心があった訳ではないのですが、ドリフターズがかつて所属していた事務所なので、先日ナベプロ帝国の興亡を図書館から借りて読みました。
クレイジーキャッツザ・ピーナッツ、タイガースに並んでドリフターズも渡辺プロの看板タレントでしたが、意外と本の中では触れられていませんでした。
日劇ドリフターズショーの前座でキャンディーズのステージがあったのですが、ギンギンのロックで演出された様子を見て長さんが、キャンディーズのマネージャーに「どういうつもりなんだ!オレたちのショーをメチャクチャにするのか。ロックなんてやりやがって・・・。雰囲気がまるで違うじゃないか!」と怒鳴り込んで来たとか、あるステージで加藤茶がアドリブで楽屋での博打の話をしたのが社長にばれて、長さんが大目玉を食らったというエピソードが書かれていた程度でした。
しかし、読もうと思ったきっかけとは別に、戦後昭和史として実に興味深い内容でした。
進駐軍相手のバンドを出発点に音楽の世界へ入った渡辺晋社長は、テレビ時代の到来を予見し、この新しいメディアを利用して多くのタレントを世に送ったのでした。
それまでヤクザな世界だった芸能界のシステムを改革した功労者でもありました。しかしその一方で、渡辺プロに睨まれれば、もうその世界では仕事が出来なくなるほどの、業界の独裁者にもなっていました。実際に渡辺社長は、政財界にも積極的に食い込んでマスコミをも押さえられるほどの力を持っていました。
佐藤栄作との個人的な付き合いもその一つで、佐藤の別荘へ自社が抱える人気タレントを総動員し、盛大な宴を開いたそうです。クレイジーキャッツの面々が歌を歌い、佐藤栄作を持ち上げるくだりがありました。ハナ肇がとある候補者の選挙の応援演説をした話もありました。渡辺社長は所属のタレントを金と時間をかけて磨き上げる努力を惜しまなかったですが、政財界との付き合いにはパーティーに呼び出すなど、社交の道具としても大いに利用していました。
その「人気タレント」の中にドリフターズが含まれていたかは分かりません。長さんの性格からすると、そういう太鼓持ちみたいな真似は嫌がるような気がするのですが。ただ、渡辺プロ主催のゴルフコンペの名簿には、仲本工事の名前はありました。

長くなったので、明日に続きます。
イラストは使い回しでは何なので、色を塗りました。

ナベプロ帝国の興亡 (文春文庫)

ナベプロ帝国の興亡 (文春文庫)